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社長のコラム

奥山浩司(剛旭)社長コラム

by 宮西ナオ子 Presents

宮西: 「AIは人間の仕事を奪う」という懸念を抱き、否定的にとらえる方がいらっしゃいますが、それについてはどのように思われますか?

井元: 実は私も同様の質問をよく受けます。しかし現状では人間の仕事を助けてくれる存在ととらえてよいのではないかと思います。例えば我々がすでに行っている歯科技工関連のAIの仕事ですが、AIに歯の形を測定させて短時間で義歯を作ることができるのです。ここで歯科技工士の先生が不要になるのかというと、決してそのようなことはありません。患者さんとのコミュニケーションもあるでしょう。しかも彼らがやりたいのはあくまでも口腔内全体の研究で、例えば「より自然な歯の形とはどのようなものか」というような研究や自分自身の技術の研鑽かもしれません。AIが働いてくれれば、本来もっと力を注ぎたい分野に時間的にも注力できるので、人間が人間として必要な分野の仕事に没頭できると思いますし、そうなれば産業全体の質が上がると予想されます。



奥山: 確かに人間がこれからも存続していくためにはクリエイティブなところでイノベーションしていく必要があると思います。さらに視野を広くして、「人類」というところまで考えると、今こそ人類はこれからも存続していくことをもっと深く考える時期にきていると思います。
今、世の中は大気汚染をはじめとしてさまざまな環境汚染が問題となり、地球が存続できるかどうかの瀬戸際にいるのです。AIにより余裕ができた人類はそれらの問題を解決するために注力すればいいのではないでしょうか。例えば自分達でいえば、世の中が原発と共存している以上、放射能物質を扱わなければなりません。それを代行するロボットの開発などが考えられ、特に破壊されていく環境に対しての対策は急務です。

自然を破壊してはなりません。自然はいろいろなことを教えてくれます。行き詰ったら自然回帰するとさまざまなヒントがあります。もし俊敏な動きで空を飛ぼうと思えば、トンボの動き、メカニズムを研究すべきで、すでにいろいろな方がそうされていますね。


井元: 自然界で動いている動物たちの形は理に適っていますね。「バイオミメティックス」という言葉がありますが、「生体(生物)模倣技術」、「生体(生物)模倣科学」のことです。すでに生体のもつ優れた機能や形状を模倣し、工学や医療分野に応用しています。例えばハスの葉の撥水効果、サメ肌の流体抵抗の低減効果、ヤモリの指の粘着力などが材料開発などで実用化されています。
 このような考え方をロボットの業界でもどんどん取り入れてほしいと思いますし、ロボットが人間の代わりに行う作業に特化したシミュレーションはAIで手助けすることが可能です。ロボットがどのようにスムーズに、迅速に動けるかということをシミュレーションし、どこに強化が必要かというような計算が成り立つと思います。


奥山: 実に我々が求めているのはそういうものです。ロボットの存在価値の一番大切なことは絶対に失敗しないことなのです。人間は時には失敗をしますが、ロボットは毎回同じ動作をしても決して失敗しません。これがロボットの特徴でもありメリットなのです。そのような特徴を生かして、役立つロボットを開発したいとおもいます。例えば、今、我々が手掛けている産業ロボットですが、周囲温度80度の高温に耐えられるロボット開発の案件があります。実際にこのような悪環境で働いている人がいるのですが、その作業を代行するロボットができないかとチャレンジしているところです。俗に「きつい、汚い、危険」といわれる3Kの職場などは、早くロボットが人間の代行をして、厳しい仕事を担ってほしい。そうすれば、悪環境での仕事から解放され、もっとほかの分野で活躍ができると思います。もともと人間がもっている能力や時間をもっとイノベーション的なところで使えるのは喜ばしいことです。

宮西: ロボットもAIも新しい分野ですが、それだけに会社ではどのような教育をされていますか?


奥山: 社員とは魂を込めた付き合いをしています。時間がなくても毎週の週報を週末読むことは習慣になっています(笑)褒めることを意識しながら、「プロ」としての仕事の厳しさも教えています。新入社員には、「会社は学校とは違う」ことをまず話しています。今、さまざまな大学でロボティクスを教えていますが、どうやら「あれをやってはだめ」「これをやってはだめ」という教え方をされているのか、なかなか思い切ったことができない若者が多い。
また「いつまでに仕上げる」という期限の概念があまりにもなさすぎる。弊社では4~6か月くらいのスパンで技術を開発するスタンスで行っています。勿論、内容により1年以上のスパンで開発することもありますが、結果を出す意識が必要です。そのためには、夢やビジョンが必要ですから、今は辛くても、将来的に希望や思いがあれば、厳しさのなかに楽しさが見出せるのではないかと思います。夢や希望そして危機感。この両極がないと人は育ちません。そこで自分の夢やビジョンを月曜日の朝礼はもとより、折に触れ社員には伝えるようにしています。


井元: 教科書を教えるだけでは教育とはいえません。むしろ教えられると逆にできなくなる。自分で自習できる環境を与えることが必要です。弊社の場合もプロとしての働き方を徹底的に自分でつかみ取ってもらっています。新入社員を採用するときは5カ月間の弊社の勉強会を経た人しか基本的には受け入れていません。この期間に、我々がどのように働いているのかを見てもらいます。何かを教えたりしません。感じてもらうのです。仕事の本当の意味での教育は、背中で見せていくものだと思います。隣で働いている姿を見ているうちに、理解してくる。また我々が作っているのは、ほぼ未知のものですから、やってみなければわからないことも多いのです。そのため納品の期間を延ばしたほうがよければ、説明をしてもらい、納得ができればそのようにします。ですから説明義務を徹底しています。働き方は個々に任せたリモートワークなので、働く場所や時間は自由。制限はありません。でも組織として会社の方針を共有するために会社の方向性と私の考え方を伝えて理念を共有していますね。(第2話終了)

コメント
ロボットやAIは人間を助けるために存在するもの。3Kといわれる現場や、環境に役立つ方向で使っていくという話に花が咲きました。またお二人の理念を伝えていく組織の在り方についても伺いました。
第3話はロボットとAIの未来について語っていただきます。
次回をご期待ください。(第3話に続く)