対談
第10回:(株)HCI代表取締役 奥山浩司(剛旭) × 熊田篤嗣
暮らしを支えるロボット(第5話)
人間に代わり仕事をするロボットの力。産業や生活に取り入れられるロボットの活躍を聞くと、あなたも身近に感じてきませんか?
宮西: 今後のロボットの普及はどのようになっていくと思いますか?
熊田: 今後の日本社会においてもロボットの重要性はますます大きくなっていくと思います。少子化の潮流の中で、日本が経済規模や社会の活力を維持し続けようと思うと、今後3つのことを求める必要があります。ひとつは少子化対策。もうひとつが外国人人材の活用。そして最後のひとつが、ロボットの技術向上です。この3つを並行していく必要があります。でも残念ながら少子化は進む一方ですから、残りの2つに頼らざるを得ません。
現状では外国人の人材だけでは難しいし、ロボットもまだ残念ながら鉄腕アトムのような優れたロボットを作る技術はありません。でも今後、最も期待できるのが、ロボットの開発・改良だと思うのです。
おそらく今後の日本社会はロボットなしに維持できないでしょうから、ロボットの重要性、担う役割はますます大きくなっていくと思います。例えば今後大きく求められるのは、介護用ロボットです。すでに老々介護などが問題になっていますが、それをロボットがサポートすればよいのです。まだすべての介護ができないまでも、力が必要な部分ならば十分にサポートできるでしょう。
奥山: 産業用ロボットについて言えば、バブル崩壊やリーマンショックを経験していく中で、人件費を削減するためにロボットシステムを導入する風潮になっています。しかし日本の99%を占める中小企業ではロボットシステムを導入するハードルはまだまだ高いように思えます。
昔に比べプログラミングや使い勝手が容易になり、導入支援もあり本来はもっと普及してもいいように思います。
しかし現実としては急激な世界情勢の悪化への懸念などから設備投資に対する回収への不安や、技術的に使いこなせるかどうかの不安、そして何よりもそのロボットシステム導入に携わる従事者が社内にいないことが一番の大きな要因だと考えています。
熊田: HCI社のロボットの特徴を教えてください。
奥山: HCIは創業当時よりケーブル・ワイヤー・チューブ・シート製造装置を製作・販売していますが、そのノウハウをHCIの理念から絶えず高度化や自動化を推進してきました。ロボットは硬いものを扱うのは比較的簡単ですが、ケーブルのような柔軟物を扱うのはとても難しく、多くのロボットシステムインテグレータは敬遠しているように感じます。しかしHCIはあえてそのような柔軟物を扱い、システムを構築していくことに努めてきた結果、広く社会に注目していただくようになりました。これからもHCIが力を入れている柔軟物の製造や、あらゆる産業、工場の中で役立つロボットの開発に精進していきます。
宮西: 一般の人に普及していくにはまだまだ時間がかかりますか?
奥山: 例えばパソコンが普及したのは、windowsができて「操作が簡単」になり、「価格が安く」なったことのおかげですね。キーワードはこの2つで、これさえ満たせばロボットも爆発的に普及すると思います。しかも普及すれば益々安くなるので、皆さんの購買欲は高まるはずで、そのような気運が高まっています。近年のスマホの普及などを見ても、流れがわかりますよね。中小企業での産業用ロボットの活用が普及を早めるでしょう。
HCIは日本ロボット工業会の会員です。日本ロボット工業会が中小企業での産業用ロボットの活用を補助金などで促進していることがよくわかります。その努力は急速にあらわれてくると思います。HCIも補助金をいただいており活用させていただいています。
宮西: そういえば一般家庭でもお掃除用のミニロボット、ルンバなども普及していますね。
熊田: ルンバは米国のアイロボット社という会社の製品です。あの会社の7割は軍事ロボットです。軍から潤沢の予算が来て、そこからの発生技術で安く販売できるのです。今や誰もが使っているインターネットも米国のランド研究所が、核戦争があってもどの回線からもアクセスできるような回線を作ったことから始まっています。最新技術の多くは軍事技術からの発生が多いのです。日本は研究するための予算が大変ですが、米国では国防予算なので桁が異なりますから、それを一般用に普及できるというメリットはありますね。戦争があれば技術革新がおこります。軍事技術には莫大な予算を使いますから、戦争そのものは駄目ですが、軍事技術の進歩は役立つ場合もありますね。
奥山: 政府予算の考え方については、熊田さんに期待します(笑)
自分達はこれから歩行ができ、人間のように仕事ができる産業用ロボットが必要だと考えています。
そしてAIにより学習し、いかに人間の作業・ノウハウを身につけるか?それにはコミュニケーションロボットと産業用ロボットの融合が不可欠ですね。(第5話終わり)