対談
第37回:(株)HCI代表取締役社長 奥山浩司(剛旭) ×「そのやま」店主 園山真希絵
AIやロボットは最高の料理を作れるか?(第3話)
「最高の料理」とはどのようなものでしょうか? 素材選びから始まり料理人の技術的な力はもちろんあると思いますが、それ以前に必要なのは、作り手が、食べる人のことを大切に考え、愛情を込めて作ることかもしれません。それでは、そのような心を込めた料理をロボットは作ることができるのでしょうか? 園山さんが挑戦する映画のシナリオにも調理するロボットが登場するとおっしゃいます。そのような構想も含めてお二人の対談はいよいよ盛り上がります。
園山: 私は以前、ロボットが調理をする映像を見たことがあり、それがきっかけでロボットと料理を主題にした映画を創りたいなと思いました。
奥山: そうですか? それは素晴らしい。実は今日、自分もある映像をもってきました。。ひとつはまだ導入されていないのですが、今後、こうなるであろうと予想される映像で、海外のロボットシステムを製作している会社の映像です。そして、もう一つは実際に導入されている映像です。
※奥山社長が調理用ロボットシステムの映像を園山さんに見せる。
最初の調理しているロボットはCGで制作しており、将来的にこうなるから我が社に投資をしてほしいというものですが、現実はどうなっているか?次をご覧ください。
※奥山社長が再び調理用ロボットシステムの映像を園山さんに見せる。
今のレベルはこのようなものです。
園山: 私もまさにこの映像を見て映画の原作を書こうと思って、わくわくしたんです。
奥山: そうなんですね。それでは実際に日本のロボットシステムインテグレータが現在、どのようなロボットを創っているかお見せしましょう。これは、自分達の仲間である大阪のロボットシステムインテグレータが製作したもので、お好み焼きを焼くロボットです。すでにハウステンボスのレストランにあるので行けば見られますし、YouTubeにも出ています。(https://youtu.be/42MJg1W_B74)
園山: これも見ました。たこ焼きをグルテンフリーで作ろうと思っていたときに、この映像を見てロボットと共演し、料理を創りたいと思いました。
奥山: とはいえまだ料理の技術が確立したわけではなく、できることは限られています。また、ここにAIと経験値のデータがシステム化されたとして、独創的な領域に達することは難しい。現状では、独創的な領域におけるロボットシステムはまだまだですね。
園山: 独創的な力がなくても、ロボットにアシスタントをしていただくことはできませんか?
奥山: 与えられたこと、いわれたことをそのままやることはロボットの得意なところですからアシスタントは可能です。人は同じことをやっていると飽きてしまいますが、ロボットは飽きることがありません。例えばニンジンをみじん切りにしてくれと依頼することは可能でしょう(笑)
園山: それならばロボットを使って料理を一緒に作ってもらえるわけですね。
奥山: あとはロボット技術がどこまで追従できるかですね。食材の大きな特徴は不定形であること。鳥の唐揚げで例えると鶏肉は小さいものもあれば大きいものもあり、形は様々。それをつまむハンド技術が必要です。しかし、これについては現段階では良い市販のハンドが販売されています。
このように一つ一つ要素技術を検証し、解決していかなければなりません。
園山: 将来的な話になると思いますが、自分の分身ロボットってできませんか?
奥山: 自分のデータを収集できれば、可能だと思います。今、日本の川崎重工業が開発しているヒューマノイドロボットや米国のボストンダイナミクス社のロボットはバク中するロボットなど、技術は進化しています。参考までにバク中するロボットの映像をお見せしましょう。
※奥山社長がバク中するヒューマノイドロボットの映像を園山さんに見せる。
園山: これ、ロボットですか? 人間が入っているみたいに、すごい柔軟な動きですね。
奥山: 人間が入っているわけではないです(笑)
このようなロボットが短期間で開発されるには訳があり、米国では莫大な国防費をロボット企業に投下し、人も金も一挙に集め、開発に注力しているからです。それに対し日本では国家予算ではなく、一企業が、採算投資を鑑みながら開発を続けています。その中で川崎重工業が、真剣にヒューマノイドロボットを世に出そうと取り組んでいることは、すごいと思いませんか?
園山: それは凄い!楽しみですね。
奥山: 我々も5年後にはプラットフォーム化されたヒューマノイドロボットにハンドやAIなどを構築し、命を吹き込む仕事=ロボットシステムインテグレートしているかもしれません。それには、もっと技術を高め、各社で協業しあうことが大切であると考えています。そして、そのヒューマノイドロボットが完成した暁には工場だけでなく、介護施設や建設現場、被災地など様々な用途で活躍できるのではと期待しています。
園山: あるいはこのようなお店で調理を手伝っていることも考えられますね。
奥山: その通りです。5年後、真希絵さんのおっしゃっていることが、現実化するかもしれませんね。おりしも5年後には大阪で万博がありますが、そのときは、このようなロボットがたくさん並んでいる光景が見られるのでは?など夢は膨らみます。
宮西: 泉大津市は「ロボットのまち泉大津市」としてロボットに力をいれていこうとしていますよね!大阪万博までにどのような発展があるのか、楽しみです。
奥山: ところで真希絵さんはどのような映画を作りたいのでしょうか?
園山: 今のところは内緒ですし、内容も確定していません。また映画となるとさまざまな条件が必要ですから、いつ具現化するのかわかりません。でも内容は世の中がどんどん進化しても、食と人と命を育む家族愛は変わらないというようなテーマを考えています。そこにロボットが登場するパターンをいくつか考えているんですよ。
奥山: ロボットが出演するならば、HCIでも協力させていただきますよ。
園山: ぜひともよろしくお願いします。その日を楽しみにあきらめずにがんばります。(第3話終了)
コメント
まだまだ開発途上とはいえ技術の進歩が明らかなロボット。これからは、今まで私たちがSFの世界で親しんできた場面がどんどん実現していくかもしれません。そしていずれ、ロボットの手作り料理を食べられる日もやってくるかも……。園山さんの映画の封切も大いに期待されるところです。
次回はいよいよ最終回。お二人にビジョンを語っていただきます。(最終回に続く)