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社長のコラム

奥山浩司(剛旭)社長コラム

by 宮西ナオ子 Presents

吉原: 奥山社長に聞きたいことがあります。人を採用するときの基準は何かありますか? 私はどのようにして人を選ぶのか大変興味があり、多くの経営者に聴いてきました。ある社長さんがおっしゃったことですが、入社希望者の工場見学時にわかるというのです。興味のある人は身を乗り出して見学しているので、その熱心さがすぐわかる。また熱心にメモをとっている人は採用するとも。一方、メモも取らず、斜めに構えているような人はダメ。やはり会社や仕事に興味を持っている人を採用することは必須なのだと思いましたね。

奥山: 弊社では最初、総務の人事担当が入社希望者の会社・工場見学をします、その時に、周囲にいる社員が彼らのことをよく見ていて、後でいろいろ感想をいってくれます。次にマネージャークラスの面談がありますが、そこでもいろいろと感想を話してくれます。自分が面談するときは、その人の目を見て話をし、今、話をしていることが本心なのかどうか誠を探ります。現在、スキルがあるかないかというよりも、入社希望者から「どうしてもHCIでロボットを作りたい」というような熱意を感じれるかどうかです。




ベトナム・インド・ブータンなどHCIは多国籍エンジニアが活躍している

奥山: 御社には外国人の社員がいらっしゃるとお聞きしましたが。

吉原: 社員7人中4人がインドシナ難民でして、最後まで支えてくれた人たちでもあります。

奥山: 弊社の場合は、ベトナム人が5人、ブータン人が1人います。次にインド人などを雇用する予定です。ベトナム人は高度な教育を受けたハノイ工科大学出身が3名います。日本語もある程度学んでいますが、最初は文化が違うので、彼らが意図していることがわからなかった。でも彼らと食事をし、仕事をし、よりコミュニケーションをとることで徐々に理解ができるようになり、1人、2人、3人と増え、今では5人になりました。

吉原: 弊社でも最初は言葉が通じないことで苦労したこともありました。でもみんな、勉強熱心で機械の取り扱い説明書など、独学で読み込んでいますから、私が知らないことまで教えてくれたりしますよ。また先輩が教えてくれることなど、几帳面にメモして、それを確認しながら仕事をしてくれるので、効率よく作業がはかどっていると思います。




奥山: 吉原会長にとって社員とはどのような存在ですか? 私にとって社員とは本当にありがたい宝だと思います。これまで素晴らしい社員たちとの出会いがあったので、今、自分のやりたいことができると感謝しています。彼らがいなかったら、これまでのことは到底できなかったと思います。

吉原: 私の好きな言葉は「楽して儲けろ」というものです。社員も私もできるだけ楽をしてきちんと働けるようになるには、どうしたらよいか、ずっと考えてきました。そして経営者とは宗教でいえば教祖ではないかと思います。例えば弊社の社員は「吉原教」の一種の信者といえるでしょう。そこでお題目を唱えなさい、つまり、仕事をしなさい。そうすれば幸せになれるということで、私もせっかく信者として弊社で働いてくれているのですから、他の会社で働くよりも幸せになってもらいたいと思っています。そもそも数多くある会社の中で、弊社を選んでくれて、一生懸命働いてくれるのですから、それに対して社員全員に部長の肩書を与え、多額のボーナスを出しているのです。

奥山: 凄いですよね。セミナーの案内を拝見してから、社員に支給されている年収や賞与について驚いていました。

吉原: 2011年から支給を開始しています。



吉原: かつてはボーナスがゼロのときもありましたよ。銀行さんは借りて払うように勧めましたが、その話に乗ったら、今度は返済するのが大変でした。半年ごとにボーナスを払うのですから過酷です。結局、払いきれなくて倒産する会社も出るでしょう。私も苦しんで考えた末に、自分の見栄でボーナスを支払うのは辞めようと結論が出ました。会社が困っていることを社員に話そう。そして払えないときは見栄を張らずに潔く払わない。払えるときにたくさん出して、ないときは我慢してもらおうと方針を変えました。こうして自分の見栄を捨てればよいということに気が付いたのです。

奥山: 弊社でもボーナスに至る利益目標があります。自分は折に触れ、社員に目標を達成できるかできないか、今、数字はこうなっていると伝えています。その数字が達成できなければ、賞与は出せません。従って目標を達成するべく頑張ろうと社員と共に創意工夫しながら取り組んでいます。




奥山: また、自分の場合は、内部留保や社員への賞与にもこだわりをもつべきですが、開発資金や今で言うと、ロボットセンターを作るためにお金も使っています。社員には大変申し訳ないのですが、ロボットセンターを作る意義を一生懸命伝えています。

吉原: 確かに経営者は、将来を見据えて行動しますが、社員の視点からすると、なかなかそこまで洞察できず理解できないこともありますね。

奥山: 社長の義務は会社を存続させることと社員のモチベーションをあげることだと思っています。さらに広い視点に立って考えると、会社を通じて社会貢献したいと思っています。自分は、学生の頃から人が生まれて死んでいくことをずっと不思議に思っていました。人は、人生の中で修行をしながら、成長していくわけですが、やはり大志を抱きながら生きていきたい。このようにいろいろ考えて、やっと行きついたのが、世界平和、人類救済に貢献することでした。

吉原: 私も初詣で世界平和について祈っていますよ。今後またリーマンショックのようなことがあれば、世界中がガタガタになってしまいますからね。

奥山: 平和を具現化できるのが会社。みなさんに喜んでいただいて対価を得る。会社は世界平和が実現できるひとつの手段ではないでしょうか。




宮西: 吉原会長は肺腺癌との宣告を受けたとのことですが、今後の抱負やメッセージなど教えていただけますか。

吉原: ステージ4で手遅れといわれ、5年後の生存率は14%とのことです。とはいえ今までやれることを行い、利益を出して、講演も、出版もして足跡を残してきました。しかし、もっと多くの人に講演をして伝えたかったという悔いはあります。実は来年の3月くらいまで30くらいの講演予定が入っていましたが、すべてにお詫びを入れてキャンセルしました。10月15日の広島講演が最後です。これが終わってから闘病生活に入ります。今は咳止めと痛み止めをもらっているところです。

奥山: Facebookで知って、本当に驚きました。


吉原: えらい反響があって、いろいろな方からメッセージをいただきました。ありがたいことです。私は病気が見つかる前から「今日1日だけ完璧に」というキャッチフレーズを社内のいたるところに貼ってきました。今日1日を完璧にできたら、5年計画でも10年計画でも達成できる。でも多くの人は、まだ先があると思っています。しかし明日のことは考えなくていい。今日1日を完璧に生きることが大切だと思っています。

奥山: 貴重なお話をありがとうございました。どうぞ、お大事にしてください。

吉原: 元気になってHCI ROBOT CENTERにあるロボットを見に行きます。

奥山: 是非ともお待ちしております。
(最終話終わり)

コメント
お二人は会社や社員についての考え、そして吉原会長は病気のことなど、すべてを本音で語ってくださいました。お二人が心から会社を愛し、社会貢献を目指している気持ちが伝わってきました。吉原会長のご快癒を心よりお祈り申し上げ、一段落したらまた気づきが満載な講演を再開してくださることを願っています。

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吉原博さんが天寿を全うし、平成30年12月26日に68歳の生涯を閉じられました。
ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。
社員や会社への熱い想いを語ってくださった姿が思い出され、大変残念な気持ちでいっぱいです。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

株式会社HCI 代表取締役社長 奥山浩司(剛旭)