新たな「夢」をカタチにする技術創造メーカー 株式会社HCI

社長のコラム

奥山剛旭社長コラム

by 宮西ナオ子 Presents

宮西: それでは、ここで産業用ロボットの歴史や現在の課題などを教えてください。

小平: 日本では 1980年がロボット普及元年といわれます。理由のひとつはマイクロプロセッサーの開発です。最近はマイコンといわず、CPUといいますが、マイコンは1970年ごろに世の中に出始めました。私が1978年からロボットを着手し始めた時、同僚が直接米国のインテル社に行き、出荷以前のサンプルをもってきました。それを私がハードウエアに組み込んで、ロボットを動かしたという懐かしい思い出があります。





小平: 1980年以後10年間、1990年くらいまでが初期成長期でした。この頃、ロボットメーカとして名乗りをあげた会社が200社以上ありました。

奥山: 200社以上!?

小平: 今はロボット工業会の統計上でも100社前後ですから、驚きです。昔は生産台数も少ないのに晴海の展示会場で国際ロボット展が開催されると、客の数よりもメーカの数が多いくらいでした。 
 その後、大きな変化は2つありました。一つ目は1990年にバブルが崩壊したときです。経済的なダメージを受けて、ロボットが全く売れなくなりました。全社的にこんなビジネスをやっていてよいのかというような風潮がありました。この頃は、大切な時期だったといえます。バブル崩壊で日本の製造業は自動化の投資対効果をシビアに考えなくてはならなかったからです。ロボットそのものも未熟でしたが、目的がはっきりしたロボットを作るようになり、コストパフォーマンスを最大化するようになりました。


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小平: それからITバブルが2000年ころにあり、翌年売れ行きががぐんと落ちました。この辺から国内向けの出荷よりもアジア向けの輸出が増えました。韓国台湾への出荷に加え、中国向けの出荷が目立ち始めました。日本国内の製造業の競争力の低下という問題もあるのですが、ロボット産業としては結局、アジアの製造業活性化が追い風になります。さらにリーマンショックの前後でロボット市場の国際化はさらに加速され、ロボットの需要は拡大の一途となりますが、もはや中国市場の急拡大による輸出依存製品になってしまいました。日本のロボット産業全体の輸出比率は既に75%を超えており、バブル崩壊以前の輸出比率は15%程度でしたので市場激変以外の何物でもありません。三菱電機のロボットは組立用途など国内需要への対応が多いのですが、それでもリーマンショック前後で輸出比率は40%から60%を超えるレベルに急上昇しました。


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宮西: リーマンショック以後の変化を具体的に教えてください。

小平: 中国の成長です。10年前と今の需要国の変化を見ると、全世界のロボットの30%の出荷先が中国です。10年前は5%しかなかったのに、今は圧倒的に中国で、しかも実態はこれ以上だと思います。というのは、「国内出荷」になっていても我々がどこかの国内メーカに出荷したものが中国に入っている可能性が高いからです。アメリカ経由、ヨーロッパ経由、日本経由で中国に輸出される場合も多く、世界中のロボットの大多数が中国に向かって出荷されているといっても過言ではない状態です。これには脅威すら感じます。

宮西: なるほど、統計上の数字だけでは表されない部分があるんですね。


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小平: 中国の国際データを見ると2016年に中国市場に向けて出荷されたロボットはおよそ9万台です。ところがこれは統計上で、日本経由などは入っていないので、実際は12~13万台あると思います。中国市場に向けて出荷されたロボットのうち、中国製のロボットも増え始めています。5年前の2012年には中国製ロボットは統計上に現れないレベルでしたが、2016年には3万台規模の中国製ロボットが出荷されていると推定され、日本からの輸出台数と大差ないレベルになっています。
 今の中国は第13次5か年計画の下で、ロボット産業の強化のために、お金も人も投入してどんどん追いかけてきます。市場が発達すれば、現地のメーカも発達します。ロボットのみならず、日本の産業はすべて同じような状況になり、今後も競争がどんどん激しくなっていくと思いますよ。最近は日本でもロボット革命イニシアチブ協議会活動や、その他の政策面でもロボット産業強化のための活動が強化されています。単にロボットを普及するという意味だけではなく製造業や国際競争力をアップさせることを考えるよいチャンスになると思っています。


小平: 工業会や官公庁でも本来の国際競争力を強めるために、ロボット産業に関わる産業構造を強化しようとしていますまずはロボットメーカでは産業機械としてのロボットを技術的に強化すること、さらにそれを活用した高度なものづくりをこなせるSIerを充実させることを重視しています。
顧客ごとに最適なシステムを設計、製造するシステムインテグレーションを事業として成功させることは結構難しいものがあります。SIerとして他社にはない優れた技術的を保有することは必要で、それを活かすビジネスモデルも各社各様になります。一方、過去にはロボットメーカが自らシステムインテグレーション事業をカバーしようという試みもありました。しかし、顧客ごと最適なシステムに必要な応用技術のカバーには限界があります。業界が違えばクリアすべき規格や基本的な生産の考え方に違いがある、独特のノウハウもある。それぞれに得意な分野と独特な技術を持ち合わせたSIerさんとの協業はロボットメーカにとっては不可欠です。そこでワイヤーハーネスの得意なSIerさんとジョイントをはかったりしていくようになってくるわけで、今後はSIerの存在がさらに注目されてくるのではないでしょうか。(第3話終了)

コメント
ロボット産業の歴史と課題。そして未来への展望。長い間この業界の先陣を切ってきた小平部会長は熱く語ってくださいました。次回はSIerについてお二人に聞いてみましょう。(つづく)
(第4話に続く)